思春期におでこにできるものから、大人になってできる顎ニキビまで、ニキビは体質によっては長い間、人を悩ませるものです。
ニキビは正式には「尋常性ざ瘡」(じんじょうせいざそう)と言う皮膚疾患で、皮膚科へ行けば保険診療の範囲で投薬・外用剤などを使って治療することができます。
また専用の化粧品やケミカルピーリング、レーザー治療なども併用することで治りやすくなってきています。
しかしニキビができた後のニキビ跡に対する治療はそう多くなく、治らないものとして諦めてコンプレックスを抱えたままにしてしまっている人も多いのではないでしょうか。
目次
ニキビ跡ができる原因は
ニキビが治った後のニキビ跡。
クレーターのように凸凹が出来てしまったり、ケロイド状に残ってしまったり・・・。
手触りもゴワゴワと良くなく、女性ではファンデーションのノリが悪くなり、目立ってしまいます。
中には一生コンプレックスとして抱えてしまっている人もいるでしょう。
ではなぜニキビが治ってもニキビ跡が残るのでしょうか?
ニキビ跡は真皮や皮下組織が傷ついた跡
皮膚は表面部から順に表皮・真皮・皮下組織に分かれます。
赤ニキビなどの重度のニキビができると毛穴の炎症が表皮だけでなく真皮にもダメージを与えます。
そしてニキビによる炎症が治まった後、真皮を修復しようと過剰に免疫反応が働いてしまうと、通常のコラーゲン生成とは違った、応急処置的なサイクルで組織を作るために真皮を構成するコラーゲンの質が低く、通常の真皮とは異なった組織(瘢痕組織・はんこんそしき)を形成してしまいます。
そして瘢痕組織がそのまま固まって表面が窪んだり盛り上がったりしてしまうのがいわゆるクレーター状態・ケロイド状態のニキビ跡です。
ニキビの炎症がひどく、真皮の下にある皮下組織にまで炎症が到達してしまうと、ほとんどがクレーター状・ケロイド状のニキビ跡へとなってしまいます。
真皮や皮下組織にまで炎症による傷が及んでしまったものは、いくら皮膚のターンオーバーが正常でも元に戻るのは無理でしょう。
ターンオーバーとは皮膚の生まれ変わりサイクルのことですが、それは一番表面の表皮内で行われるものであり、その下にある真皮や皮下組織はターンオーバーでは生まれ変わりません。
刃物等で深く切ってしまった傷や、皮膚がえぐれるほど深い傷を負った跡、手術の跡をイメージしていただくとわかりやすいと思います。
表面の引っかき傷くらいでは跡に残ることはなく気づいた頃には消えますが、上記のような傷は一生跡として残ることもあります。
ニキビ跡ができやすい体質
またニキビ跡ができやすい体質というのもあります。ニキビが炎症へと発展しやすい、ニキビが大きくなりやすい、そんな人は当然ニキビ跡もできやすいです。
また皮膚のコラーゲン産生能力が高いタイプも、一見肌が良い状態になりやすいように感じますが異常なコラーゲンが大量発生するために瘢痕組織作られやすく、ニキビ跡ができやすいと言えます。
また皮膚に厚みがあり、ケロイド化しやすいタイプの方も同様で、逆に皮膚が薄い場合はニキビ跡になりにくい傾向にあります。
まずはニキビ跡ができないように予防が第一
まずはニキビができてしまったら一刻でも早く炎症になるのを食い止めるために皮膚科などで正しい処置を受けることが大切です。
飲み薬や外用薬、皮膚科での処置など、体質にあったニキビ治療を早めに受けて悪化するのを防ぎましょう。
炎症が真皮や皮下組織にまで広がる前に治癒するように気をつけなければいけません。
しかしそれでも悪化してニキビ跡になってしまったものは、もう治らないものと諦めないといけないのでしょうか?
真皮層を構成する組織「コラーゲン」とニキビ跡の関係
皮膚の一番外側の層である表皮とその下にある真皮を合わせた厚さは平均して約2ミリ程度で、真皮は表皮の約10〜20倍ほどの厚みがあります。
真皮は表皮を下から支える層で、コラーゲン線維とエラスチン線維とが網目状に張り巡らされており、皮膚のハリや弾力を保っています。そしてその線維の間を粘液状の基質が埋めています。
基質の成分はヒアルロン酸やコンドロイチンなどのムコ多糖類で、皮膚の潤いを保つ役割を果たしています。
またコラーゲン線維は真皮の線維組織の主成分であり、約70%をしめています。
それだけコラーゲンは皮膚にとってとても重要な成分といえます。
ニキビ跡は真皮にまで及んだ傷跡が原因と説明しましたが、実際にニキビ跡の真皮はコラーゲン線維の束の分布が正常部とは異なることが報告されています。
そのため治療はコラーゲンを主成分とする真皮の再生がキモとなります。
コラーゲン線維とエラスチン線維を生み出すのが線維芽細胞で、真皮の中に存在します。
コラーゲン線維は新しいコラーゲンを生み出す繊維芽細胞で生み出されて、真皮でその役割を果たし、古くなったものは酵素によって分解され、新しいコラーゲンを生成するためにリサイクルされます。
このコラーゲン代謝サイクルは数年とも言われており、そのために時間が経ってもニキビ跡が消えずに残ってしまうのです。
コラーゲンの再生がニキビ跡の治療につながる
できてしまったクレーター状・ケロイド状のニキビ跡を治すには、コラーゲンの再生が必要です。
コラーゲンの再生にはコラーゲンドリンクなどの経口摂取では効果がなく、また表皮から塗るいわゆる化粧品でも真皮や皮下組織にまで作用しないため意味がありません。皮膚への直接のコラーゲン注入がもっとも効果的です。
注入に使われるコラーゲンは、以前は動物由来のものが主体でアレルギーテストが必要でしたが、最近はヒト由来なものが使われることが多いのでアレルギーを起こす可能性が低く、テストは不要となり、安心して受けていただけるようになりました。
コラーゲン注入は、美容皮膚科、美容外科などで行っており、注射だけで済むので痛みも少なく、ダウンタイムも短いのが特徴です。注射の後の赤みが少し残る程度で、当日からメイクをしていただけるので通常通りの生活ができます。
このように、飲み薬や化粧品などのホームケアでニキビ跡を改善するのはほぼ不可能ですので、一度美容外科などで相談してみることをお勧めします。